
アフガニスタンに生まれ、紛争中にフランスに亡命した作家、アティーク・ラヒーミー氏による一冊です。
まるで演劇を見ているような気にさせられます。定点観測のように、ある一室の視点からのみで物語が進むからです。その視点には、ある女と、銃弾をうけ意識がなく横たわり、ただ呼吸するだけの女の夫が映り込みます。初めは、無気力で淡々とした描写が続くのですが、中盤から始まる展開は目が離せなくなります。女が〈忍耐の石〉を見つけ、そして〈忍耐の石〉へ向かって、女が抱えていた秘密を全て告白していくまでの過程は、物語としてとても美しいなと思います。
世の中には暴力を通してしか描けない物語があると思っていて、この話は、そんな物語の一つだと思います。(でもこの本には、そんなに生々しい暴力の描写はありません。)
私には、文化の違いから、話の出来事をリアルには感じることができません。だから単純に物語として読むことができますが、実際にこの話と同じ文化圏にいる人は、違った受け止め方をするだろうとな思います。また、女性だけでなく男性の痛みも描かれています。そして、物語の最後は、これ以上のものはないと思うような完璧な最後だと思います。
演劇の好きな人、フェミニズム問題に興味のある人にオススメです。
著者:アティーク・ラヒーミー / 訳者:関口涼子 / 発行:白水社EXLIBRIS / 195mm × 138mm / 158P / ハードカバー / 2009年10月25日発行 / 古書
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